
Feature|2016.07.22
《特集》涼を求めるこの季節には。

寒くなってくると、赤や黄に色づいた葉が山や街を彩りはじめる。昔は、なんだか物悲しい気分になるこの季節が、あまり好きになれなかったけど、いつの間にか、少し枯れたような、褪せたような、この時期特有の山や木の色も、秋らしくていいなぁと思うようになってきた。紅葉狩りなんて洒落たことをよく言ったものだ。そんな季節、部屋も秋の花で飾ってみる。うっすらと桃色のコスモス、白い小花がかわいらしい野菊、小さな実がたくさんついたリンゴの枝も手に入った。枝や葉の形も、花の形も様々だから、ボウルのような口が大きくて、平たい器に飾るのもいい。秋の花で、染まった部屋はゆったりと穏やかな時間が流れて、こんな風に季節が過ぎ行くのを楽しむのもいいものだ、としみじみしてみたり。秋の七草は、いつまでたっても答えられないけど、それ以外の花に少しだけ詳しくなる、そんな一日。
text:スタッフ成戸

秋の草花を集めて、Floraのボウルに生けてみた。250mmだとかなりのボリュームで、テーブルに置くと一気に華やかな雰囲気になる。茎がしっかりとしたもので基礎を作れば、あとは全体の色調を見ながらバランスよく差していくだけなので、家や道脇に生えている秋の草花を摘んで、一緒に生けてみるのもいい。どんな花を摘むかは、草花をモチーフにした、ファブリックや絵を参考にするといいかもしれないと、デスクの前にかかっているartekの生地、『MEADOW FLOWER』を見て思う。
アジサイとユーカリの頭をベースの縁に引っ掛けて、基礎を作る。その枝の間に、レースフラワー、ヤマシロギク等の細かい花や枝をバランスを見ながら差していく。
Bowl250mm (iittala / Flora)
こちらは秋の草花を、スモールサイズで。基本は250mmと同じだけど、高さが低いので、生ける植物にそんなにボリュームがなくてもOK。可憐な花や、小さな実の付いた蔓を生けると、かわいらしくまとまる。ボウルに花を生けると、上からみたところが一番のナイス角度なので、低いローテーブルに飾るのがいいと思う。
ホソバリンドウと野葡萄をボウルの縁に沿って引っ掛けて、その茎の間にコスモスを差していく。コスモスは小さめな花を少しだけ、好い塩梅で。

特徴的な形のアアルトベース。花を飾るバランスが難しいイメージが強くて、あまり手に取れない、苦手意識が高かったベースだ。しかし今回、準備した中で一番気に入っていた野葡萄が、その苦手なベースにきれいに収まったのは、新しくうれしい発見だった。枝が2方向や3方向に分かれた蔓、普通のベースに生けると、不格好に広がってしまうけど、アアルトベースはその変わった形の縁の部分で枝が支えられ、きれいに生けられるのだ。今まで蔓ものといったら、ベースの外側に、垂れ下がるように飾るしか能がなかった私にとっては、目から鱗、簡単で美しい生け方。これで、枝ぶりをミスって蔓ものを買ってしまっても、心配無用。うまくベースに収まらないケースが回避できる。思いもよらない方向へと進む枝に悪戦苦闘せずにすむ。
枝分かれしている端から端が、Aaltoベースの直径よりも長いところを選ぶ。バランスを見ながら茎の長さを調整して、ベースの縁に枝の端を引っ掛ける。片方の枝が長く伸びているのもかっこいい。

秋の花といえば、真っ先に頭に浮かぶのはコスモス。田舎育ちの私は、秋になると田んぼ一面にコスモスが咲くのを見るのが好きで、誰かに教えてもらった、それが宇宙人の仕業、という噂を結構大きくなるまで信じていた。宇宙人がそんな粋なことをするかどうかは謎だけれど、休耕中の田んぼの使い方としてはベストだ、という上から目線の好評価。コスモスは、細い枝がくねくねといろんな方向に向いているから、束にしてもかわいくて飾りやすい。生ける時は、下の方の葉っぱは取りのぞいて花瓶にさすと、長持ちするって花屋談。
可憐な花と、自由に伸びる細い茎を存分に楽しみたいので、他のものとは混ぜずコスモスだけで。背の高い245mmには、長いまま(コスモスの長さは一番長いところで75cmくらい。)花が全て同じラインに並べずに、いろんな高さ、いろんな方向を見るように生けると、自然に生えている部分を抜き取ったよう。100mmと180mmは、コスモスの色を分けて飾ってみた。小さな100mmは、いつも一輪を可憐に飾るパターンが定番だから、濃い色目のコスモスを多めに入れてみる。
100mm / 180mm / 245mm
3pcsセット(SKRUF / Bellman)
太っちょの145mmは、背の高い3つとは離れて単独行動。寸胴で口が広いので、何種類かの花をまとめて飾ったり、ボリュームのある花を飾るのに向いている。今回もまずはアジサイを手に取り、それをベースにして何種類かを一緒に飾った。アジサイといっても、家の庭先や道端に生えているアジサイではなく、アナベルという外来種。細かい花びらが集まった八重アジサイは、繊細で淡い色が優しい印象だから、単体で飾るのにも他のものと合わせて飾るのにも扱いやすくていい。ドライにしてもいいらしい。
アジサイの頭を、ベースの縁に引っ掛ける。更にもう一つのアジサイは、高さを変えるとバランスがいい。レースフラワーの黒、コスモスを、アジサイの中に埋め込むように差して、全体を整える。
145mm (SKRUF / Bellman)

『この赤い実、なんですか??』思いもよらず、リンゴとの返答に一同騒然。当然『食べられますか?』と続く。残念ながらまずいらしい。とはいえ、もうそれだけで、かわいい必要十分条件が満たされている小さなリンゴが、気になって気になって、手に取り眺めひとしきり楽しんだ後、さてどう飾る?これが意外に難しい。細長いから、とりあえずフィンランディアに差してみたら、うん、まあいいような感じ。花瓶の中が少しさみしかったので、りんごちゃんをコロンと入れてみたらかわいらしくまとまった気がしていますが、どうでしょう。
無駄な葉はとって(枝が弧を描くその下部分、ベース付近は、葉が多いと重たくなりがちなので、リンゴの実がちらりとかわいく見えるように、バランスを見てとってしまう。)枝をズバッと差す、ただそれだけ。
赤い実特集第2弾。オレンジの粒々がたくさんついた飯桐は、実が重くて枝がしなるから、フラワーベースから垂れさがるとどうしても侘び寂び感が出てきてしまう。ということで、垂れ下がり防止策。落ちる実をくるくるとまとめて、ベースの縁にのせてみた。茎がゴツめだったので、中が見えないホワイトに差してみると、小さなリースみたいに飾れた。実ものはかなり長持ちするらしいから、これからの季節長く楽しめそうだ。
飯桐は、実の付いた枝の部分をくるくるとまとめながら、ベースの縁にのせる。粒が一回り小さくて赤い、ガマズミを奥に偲ばせると、2色の赤で奥行きが出る。丁子草を添えると、秋の雰囲気がマシマシ。

Floraの12㎝は細い花の一輪ざしが定番だったけど、今回はユーカリをベースにしたコンビネーションスタイルにチャレンジしてみた。ユーカリの細い枝を差して、それに合わせて細かい花や白い小花を組み合わせて飾ってみる。ユーカリの淡いグリーンは、鮮やかすぎず、主張しすぎることもないので、小さくかわいらしい花をちゃんと引き立ててくれる。洒落たカフェみたいな雰囲気が出来上がるから、嬉しい。ユーカリの葉先についている、粒々、これが結構効いている。
ユーカリの枝を切って差す。それに沿うようにレースフラワーとヤマシロギクを。ユーカリは少し長めがバランスよし。ヤマシロギクの替わりに、野の花を生けても。
ユーカリは、独特な色合いが他の花と相性がいいから、切り花でよく使う植物のひとつ。しかし、私たちが手にしているユーカリはその中のほんの一部、なんと全部で600種以上もあるらしい。今回使用したのは、ポポラスという品種で他のものと比べると葉が細長く、小さな実が付いているのが特徴。他にも香りが強いものや、葉っぱの付き方や形がおもしろいもの、幹が真っ白なものなど、種類によって色々なので、季節や一緒に合わせる花によって使い分けてみたい。ちなみにユーカリといえば、コアラと続くけれど、コアラが食べるユーカリの種類は10種類くらいしかないらしい。ユーカリならなんでもいいって言う訳ではないらしい。
かなり立派な枝のユーカリ。枝を変なところで切ってしまうと、重心のバランスが崩れてベースに差した時にくるんとひっくりかえってしまうこともあるので、カットは少しずつが賢明(枝固いので切るの大変だけども)。少し長めか??と思うくらいでストップして、一旦深呼吸。案外これくらいがいい雰囲気です。

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