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2020年2月1日
しじみ

その日のご飯の汁物が“しじみの味噌汁”だと、娘が高確率で「おかわりある?」と聞いている気がします。天然の出汁かとか、体にいいとか、全く考えてないだろうから、ただうまいんだろうなぁ、こういううまさが好きなんだなぁと、一生懸命小さな貝の身を食べる姿を眺めながら僕は考えていたりします。

世の中に「うまいもの」はたくさんあります。僕もコンビニをうろうろして気になるものを買ってみるけれど、だいたい良くできていてうまい。そんな食品を手軽に買えることってありがたいなと思う反面、どの食品も見事にうま味が強いから、細かい加減が少し分かりにくくなっている気もしています。それじゃあせっかくの「食べる」という楽しみの幅を逆に狭めることすらあるかもしれない…とも。

たまにはシンプルな食べ物を、その素材ならではのうま味の強さ・余韻の残り具合・後味のすっきり度など、考えをめぐらせながら味わってみてほしいなと思います。あらためて自分の好みの美味しさ、うまみの加減の輪郭がはっきりして、料理や食事の楽しみ方のヒントになるはずなので。

それでは、ここからはそのシンプルなうま味たっぷり、しじみの味噌汁の作り方を簡単に。 500mlの水に昆布を入れて30分ほどおいて味をひきだしやすくしておき、火にかける直前に洗ったしじみを加えます。

火加減は弱めの中火くらいで、いきなり沸騰させるのではなく、じんわりとあたためていき、しじみと昆布から旨みを引き出します。沸いたらアクを丁寧に取り、昆布も取り出します。そこへ味噌大さじ2、酒大さじ1ほどを加えたら完成、むずかしいことはありません。仕上げには好みで粉山椒をふってください。

ちょっと専門的な話になりますが、昆布のグルタミン酸としじみのコハク酸の合わせ技で、【うま味の相乗効果】なるものが発動し、感じるうま味の強さが倍増すると言われています。もちろん昆布なしでも作れるけれど、口にしたときの飲みごたえも、余韻がありつつもすっきりとした後味も、どちらもかなえてくれるので、ぜひ一度おためしを。

水500mlに対してのしじみの分量は200gほど。また、しじみは冷凍するとうま味が増すよ!といたるところで聞きますが、確かにうま味は増すけれど、若干泥臭さが出てくることもあるので好みにもよるかなと。冷凍せずに昆布を合わせてうま味を倍増する、これがいちばんな気がしている冨田なのでありました。

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

2018年8月1日
冬瓜

暑い日が続きます。食欲だけでなく、キッチンに立つ意欲もおちこむ季節ですよね…。どうにかやる気になってもらえるよう、今回紹介する「冬瓜の豚汁」と「料理すること」の魅力について僕なりにちょっとマジメに書いてみようと思います!

冬の瓜と書いて、トウガン。漢字で見ると冬野菜のようですが、冬瓜は夏の野菜です。丸のまま冷暗所で保存すれば冬までもつ、ということでのネーミングだそう。おかげで旬の時期が分かりづらくなってしまったというあたりは否めないですが…。冬瓜といえば、えびと煮たものが定番で、手間のかかるイメージでしょう。でも今回の豚汁はだし汁ナシで美味しく仕上がりますし、生姜の爽やかさもきいて、軽やかな冬瓜が活きる夏の味わいです。

では、ここから作り方を簡単に。冬瓜は薄く皮をむいて種とワタをのぞき、食べやすい1cm厚くらいの大きさに、豚肉も食べやすい大きさに切ります。

鍋でごま油とせん切りの生姜を熱し、香りが出たら、冬瓜と豚肉を入れ軽く炒めます。そこに水を加えて冬瓜に火を通し、味噌をといて完成です!

ポイントは2つあって、一つはだし汁を使わない分、香りやコクの出る食材、ごま油、生姜、豚バラ肉を組み合わせること。もう一つは冬瓜にじっくり火を通すこと。味噌をとき入れる前に7~8分煮て、味噌を入れた後もさらに数分、冬瓜に少し透明感が出るくらい煮ましょう(写真は味噌を溶き入れてすぐ。ここから2~3分煮ると透明感が出てきます)。とろっとした柔らかな口当たりが、冬瓜のやさしい味わいにピッタリですから。

最近、これからも料理をがんばろうとあらためて考えるきっかけがありました。身近な人が病気で倒れてしまったのですが(いまは快方にむかっています!)、回復を待つなか、その人に食べさせてもらった料理が色々と頭にうかんできました。その人らしさのつまった料理で、外では買えないものであり、美味しさ以上にそこに価値があるんです。こんな風に自分も誰かに思い出してもらえる料理を作っていけたらいいな、そういう料理作りの手助けができたらいいなと、僕のひそかな目標になりました。この冬瓜の豚汁も、外では食べる機会のない料理だろうと思います。せっかくキッチンに立つのなら、家族に、自分に、そんな料理を作ってみるのはどうでしょう。

(c)冨田ただすけ
文・写真/冨田ただすけ

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