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2009年5月20日
私の愛するヴィンテージ・ファブリック

PHOTO:原田 智香子

探し求めた、マリメッコ前身のファブリック

一週間前に我が家に新顔がやってきました。それは郵便屋さんが届けてくれた布。私がずっと探し続けていた布なんです。小包を開けた時の私の気持ち、わかっていただけるでしょうか。どんなに嬉しかった事か。その布はマイヤ・イソラが1950年代にデザインした≪PARIISIN PORTIT(パリの門)≫という3メートル程の布です。ヤッター!

布は聞いていたよりもずっと良い状態でした。カーテンとして使われていたということで、わずかに色は褪せていますが黄ばんではいません。私もこれを寝室のカーテンにするつもりです。そうすれば朝はじめに目に入るのはこの布、そして一日の最後に目にするにもこの布、というわけです。

このプリントPARIISIN PORTITは若い芸術家であったマイヤ・イソラが、マリメッコの創設者、アルミ・ラティアにデザインした物の一つです。1940年代、50年代の初めのことで、まだマリメッコの名前がなかった頃です。その美しさ、またその中にいっぱい詰まったフィンランドのデザインの歴史にいまさらながら驚きます! デザインのテーマは、その少し前までマイヤ・イソラが芸術を学んでいたパリから来ています。ノスタルジーですね!

布の端には≪Maija Isola Pariisin Portit Printex≫と書かれています。Marimekko 社の前身は名前をPrintex(プリンテックス)といいました。これです! 私たち収集家は正にこの文字を古い布の端っこから見つけようと必死なのです。もう一つ収集家の憧れの的はMarikangas や Maritextil というものです。Printexの後、Marimekko になる前のマリメッコの布にプリントされた社名です。

時代を彩るデザイナーたち

マリメッコはけしてフィンランドの唯一のテキスタイルデザイン会社であったわけではありませんし、マイヤ・イソラはマリメッコのスタイルを築き上げることに最も貢献していますが、彼女が唯一のデザイナーだったわけでもありません。マリメッコのデザイナーとして忘れてはならないのは、他に脇坂克二さん、石本藤雄さんなどがいらっしゃいます。石本さんは200以上のデザインを生んでいます。

私は脇坂さんのファンの一人です。彼の70年代のデザインKumisevaは最近再生産されましたね。この布には教会の塔がデザイン化され表現されていますが、これを見ると私はヴィンセント・ヴァン・ゴッホを思い出します。可愛らしいおもちゃの車が行ったり来たりしている子供用の布をご存知ですか?これも脇坂さんのデザインです。

1950年代、60年代のフィンランドにおけるテキスタイルデザインは、その範囲がとても広くそして非常に色彩の濃い時代でした。例えばヨーロッパを代表するフィンランド生まれのテキスタイルデザイナー、レーナ・レヴェル(Lena Rewell)の名前を覚えている人は、フィンランドでも少なくなりましたが、彼女も信じられないくらい素敵で、モダンな布をデザインしたデザイナーです。

マリメッコの強烈なライバル

当時、マリメッコの最大の強敵はメツソヴァーラでした。テキスタイル・デザイナー、マルヤッタ・メツソヴァーラの会社です。当時のことはよく覚えています。メツソヴァーラのショップは、ヘルシンキのエスプラナディ通りのマリメッコやアラビア・イッタラの並びにありました。

マルヤッタ・メツソヴァーラの布は、時にはマイヤ・イソラよりもっと大胆で、お花ももっと大きかったです。スウェーデンでメツソヴァーラのKameliaのカバーリングセット、2セットを見つけた時には、あまりのうれしさに自分が壊れるかと思いました。今は他のシーツでは絶対に寝ません!巨大なブラウンの花は、私に70年代の強烈な色や大胆なスタイルを思い出させます。こんなシーツにくるまれていると、すごく大胆な夢も見られそうです。

もしマルヤッタ・メツソヴァーラの回顧展があったとしたら、きっと多くの人は空いた口がふさがらないのでは、と思います。彼女は物凄く豪快で、直感で仕事をするデザイナーでした。ぼんやりしたタイプの人にはショックが強すぎるかもしれません。

パッチワークベッドカバープロジェクト!

最近、我が家を占領してしまうような大きなプロジェクトをはじめました。突然ですが、私はマリメッコの古い布を使い、家族全員にパッチワークのベッドカバーを作ろうと思い立ったのです。

娘のメリには赤系と白系の色合いの布、たとえば古い赤いUnikkoやLokkiで作りたいと思います。私たち夫婦には2.5mの幅があるカバーで、茶色やみどり、黒を基調に白系も加えて。(考えているのはマイヤ・イソラのKaivoやMuija、Kakiなど。他に石本さんのKorentoも入れたいです。)

ヘンリのベッドカバーが一番難しいところです。彼には青、グレー、みどりの色味のカバーをマリメッコのJokapoikaシャツの布で作ろうと思います。私はすでに蚤の市で古くて状態の悪いシャツを買い集めました。どれも洗いざらしになっていて、眼にも眩しいような美しい色合わせもちょうど良い具合に落ち着いた色見になっています。それらのシャツを私はすべて、小さな縫い目まで解き、洗い、アイロンをかけ、そして大きな四角にカットしました。

今のところ使ったシャツは20枚ほどですが、まだまだ買い集めています!子供に言わせると、シャツの縫い目を果てもなく解き続けている母親はちょっと変、らしいですが私は全くかまいません。

いろいろな異なる色合いの布をレイアウトし、大きな表面にするのはなかなか難しい部分です。同じような色を並べるのは簡単ですが、それでは出来上がりはメリハリのない、つまらないものになってしまいます。大きな面には驚きや、何か目を見張るような色の組み合わせが必要になります。そういうものの創造にはやはりアーティストやプロのデザイナーの力が必要になります。

ヴィンテージ・ファブリックの魔法

私はマイスオミ・チームの一員で、経験のあるテキスタイルアーティストでもあるみどりを助っ人に呼びました。今の時代の息吹を感じる、新しいプリントデザインを生んでいるみどりさえも、ここ数十年のヴィンテージ・ファブリックの魅力には簡単に引き込まれてしまいました。彼女は一瞬にしてJokapoikaシャツのはぎれのレイアウトに夢中になり全体をデザインし始めます。まるで古い布には魔法があるみたいに・・・。

この前みどりが我が家に来た時にも、キッチンのドアにかけてあった古いKaivoを見て、「古い布って何故新しい物よりこんなに美しいのかしら?」って言ってたっけ。

私はフィンランドの古いヴィンテージ・ファブリックを集めてはいますが、それでも新しいテキスタイルデザインも大好きだし、新作のマリメッコも買います。我が家には50年も古いテキスタイルから最新の布までありますし、古いガラスや食器と一緒に新しいものも使います。その結果生まれる時代のレイヤーは、それぞれの物の美しさを2倍に引き立てます。

異なる美しさのレイヤーが作り出す新たな美しさに、私は新鮮さを感じるし、インテリアをもっと興味深くすると思います。古いものと新しいものが仲良く並んでいると、なんとなく人間の自分も年をとっていいし、自分のままでいていいのだな、と思えてくるのです。子供たちも、きっとこの美しさは彼らが生まれる前からあったのだということをわかってくれると思います。


Text & Recipe : Hanna Jamsa (ハンナ・ヤムサ)

ヘルシンキを拠点とした現地でのガイドツアーや様々なサービスを日本人旅行者に提供する会社、My Suomi(マイスオミ)代表取締役。実はフィンランド屈指のアンティークコレクターでもある。フィンランド・ヘルシンキ在住。

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ベリーキーッセリはパズルのようなものと考えてください。 始めにジュースを選び、それを片栗粉でとろみをつけ、最後にベリーを加えます。その組み合わせでいろいろなものが出来ます。クロスグリやアカスグリのジュースをベースに作ると味に酷が出ますが、出来上がりは黒っぽくなります。りんごジュースはさわやかな味に仕上がりますし、ベリーがきれいに見えます。キーッセリに使うベリーはお好みでいくつかの異なるベリーを混ぜてください。フィンランド人が好きなのはブルーベリーとラズベリーを合わせたものです。もし、コケモモやツルコケモモなど、酸味の強いベリーを使う時には砂糖の分量を少し増やしてください。