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展覧会レポート「タピオ・ヴィルカラ 世界の果て」

10月のフィンランド出張中、ハッリ・コスキネンのご自宅で撮影をさせてもらった時、「そういえば11月に日本へ行くんだ」とハッリに言われてびっくり。現在、岐阜県現代陶芸美術館で行われている展覧会、「タピオ・ヴィルカラ 世界の果て」を見に来るとのことでした。スコープからすごく近い美術館だよ!とシャチョウが話したら、じゃあ一緒に行きましょうということになりました。何を隠そうハッリの奥さんであるペトラは、タピオ・ヴィルカラとルート・ブリュックのお孫さん。この展覧会の開催にも携わっている方なのです。そんなペトラさんに案内してもらったタピオ・ヴィルカラの展覧会を彼女から聞いたエピソードやシャチョウのリアクションと共にレポートしたいと思います。

タピオ・ヴィルカラ ー 世界の果て
スタジオの扉

会場に入ってすぐ目の前に現れるのは、ヘルシンキにあったヴィルカラの事務所のドア。写真だとレンガに見えるかもしれないですが、木のブロックが積み重ねられているんです。シャチョウはこの扉がかなり気に入っていたみたいで、スコープハウスのドアをこれにしたい…と呟いていました。

  • タピオ・ヴィルカラ ー 世界の果て
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ドアの裏側に広がるのは積層合板で作られたアートピースの数々。シャチョウがこの中でペトラさんの家にあったものとかってあるの?と聞いたら、これはタピオの事務所にあって、これと、これと、これも…家にあったかな。と驚愕の返答。写真右上の「Pyörre(渦巻き)」は家にはなかったそうで、ペトラさんが子供の頃に展覧会で始めて見た時、「ねえなぜこれは家の洗面所にないの?」と聞いて、作品を鑑賞していた周りの人たちを驚かせてしまったのと笑いながら話してくれました。

タピオ・ヴィルカラ ー 世界の果て
Riikinkukon sulka(孔雀の羽)
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そして、このエリアの一番奥にあるのがシャチョウの身長を優に超える程大きな「Riikinkukon sulka(孔雀の羽)」。この模様は積層合板の断面から作られるそうです。横から見るとその仕組みが分かりますよと言われて、覗き込むシャチョウ。

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    Suokurppa / Kuikka(スオクルッパ / クイッカ)
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    Kantarelli(アンズダケ)

続いて現れるのは、ブロンズや木から作られた鳥の彫刻作品。そして、タピオ・ヴィルカラの代表作の一つ「Kantarelli(アンズダケ)」をはじめとするガラスオブジェの数々がずらりと展示されています。「スオクルッパ」、「クイッカ」と名づけられた鳥の彫刻 は、フィンランド最北の地域ラップランドにあるヴィルカラの家の前の草地や水辺に飾られていて、そこにはよく本物の鳥たちが集まって来ていたとペトラさんが話してくれました。展示会ではその当時の写真も見ることができるので、要チェックです。

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    タピオの愛用品 ククサとパイプ
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    ポスター
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    Kolpakko(タンカード)
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    Puukko(プーッコ ナイフ)

アートピースの展示のエリアを抜けると、タピオ自身が愛用していた日用品や、彼がデザインした様々なもの、例えばグラスや紙幣、カトラリーや、ポスターなどを一挙に見ることができます。展示されているものの中でも、ククサ(白樺の木を削り出して作るカップ)はタピオが最も愛用していたものだそうです。そして、もう一つ興味深かったのが「Kolpakko(タンカード)」というグラス。元々はマスタードが詰められた状態で販売されていたそう!マスタードを食べ終わるとジョッキとして使えるという優れモノ。お話を聞くまで、まさかこれがマスタードのパッケージだったとは思いもしませんでした。

タピオ・ヴィルカラ ー 世界の果て
ペトラ・ヴィルカラさん
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    Cumulus(キュムラス)
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    Karhunpää(クマの頭)

ここでペトラさんはタピオと彼の妻ルート・ブリュックのエピソードをいくつか話してくれました。タピオ・ヴィルカラはドイツの食器メーカーであるローゼンタールでいくつかのシリーズをデザインしているのですが、それらの装飾は全てルートが手掛けています。タピオのデザインに柄を乗せることが許されていたのは彼女だけだったそうです。ちなみに、シャチョウのお気に入りは「Cumulus(キュムラス)」。現在は作られていないシリーズですが、ビンテージショップなどで探すと今でも時々見つかります。ローゼンタールの食器の横にはアクセサリーが展示されていてそれを見たペトラさんが、これらも元々はタピオがルートのためにデザインしたものなのよ、と教えてくれました。会場ではルート・ブリュックの作品もいくつか展示されているので是非探してみてください。

  • タピオ・ヴィルカラ ー 世界の果て
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更に進むと、タピオとルートが暮らしていたラップランドの家の模型や写真が展示される部屋へ。ラップランドの家には水道も電気もなかったそう。夏の間に思いついたアイデアは、電報やテレックスを使ってイッタラ工場へ連絡、型を作ってもらい、それを1000km以上離れたラップランドの家へ運び、タピオが自身の手で調整して、再びイッタラ工場へ。そんな流れで試作を進めていたと聞き、気が遠くなってしまいました。

タピオ・ヴィルカラ ー 世界の果て
Bolle(ボッレ)
タピオ・ヴィルカラ ー 世界の果て
Ultima Thule(ウルティマツーレ)

ラストはヴェネチアのガラス工房ヴェニーニで作られた作品、そして、ウルティマツーレで締めくくりです。(クリアガラスはイッタラ、色ガラスはヴェニーニで作っていたそう。)

「タピオ・ヴィルカラ 世界の果て」は、岐阜県現代陶芸美術館で2026年1月12日まで開催されています。岐阜が巡回展のラストということなので、お近くの方は是非足を運んでみてください。(スコープ 松尾)

タピオ・ヴィルカラ 世界の果て
2025年10月25日(土) - 2026年1月12日(月・祝)
岐阜県現代陶芸美術館〈岐阜〉
https://www.cpm-gifu.jp/museum/events/event/event-10380