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2008年3月20日
フィンランド人と日本人をつなぐ味覚と食器

PHOTO:原田 智香子

カイ・フランクのキルタ-シリーズ

マイスオミのツアーで日本人のお客様を、アラビア美術館にお連れする時はいつも意気込んで熱くなってしまう私なのですが、数あるすばらしい品々の中でも私を一番熱くさせてくれるのは、カイ・フランクのキルタ-シリーズが収まっているガラスケースです。そこには他にも彼が1950年代にアラビアにデザインした作品が詰っています。

(キルタ-シリーズは ティーマ-シリーズ の前身です。ティーマは現在でも生産されていますね。)

先日、家具デザイナーとしてお仕事をなさるタカダさんをアラビア美術館にお連れした時のことです。私が説明を始めようとすると、

「カイ・フランクはこの作品をデザインする前に日本を訪れたんですか?」

あまりに的を射た質問でしたので、つい笑い出してしまいました。キルタ-シリーズは1953年に発売されました。カイ・フランクが勉強のために日本に長期滞在したのは1956年。でも、もちろん彼はずっとその前から日本に影響を受けていました。彼の作品の中でもっとも日本的なものはロケロバティLokerovati(コレクターの間では折り紙皿と呼ばれています)。フランクがこれをデザインしたのは1957年、日本から戻ってすぐでした。

日本人がこのお皿を何のためらいもなく受け入れられる意味が分かります。そして-タカダさんもおっしゃっていましたが-今では反対にフランクの食器が日本に影響を与えているわけです。

フィンランド人にとってフランクの食器はアルヴァ・アアルトの家具と同じくらい当たり前のものです。言ってみれば私たちフィンランド人はデザインに関してあまりに贅沢をし、与えられすぎで育ってきたので、すっかり常識を失ってしまったのです。最高のデザインは子供時代からいつでもまわりにごろごろしていましたし、それが当たり前と思ってしまい、そのすばらしさを評価することも忘れてしまったのです。

フィンランド人に必要なのは、私たちの目を開き自分たちの周りにある美しい品々に気づくこと、そしてどんなにすばらしい環境で生きているかに気付くことです。もう一つ、フランクにまつわるお話をしたいと思います。これはフィンランド航空で管理職を務めるペッテリ・コステルマー氏に数年前に起こったことです。

当時コステルマー氏は、フィンランド航空の東京支社に勤務されていました。 ある休暇中、コステルマー氏は妻とともに日本の山岳地帯へとドライブに出かけました。しばらく行くと小さく素敵な焼き物工房を見つけました。コステルマー氏は日本語が話せるため中に入っていき、陶芸家とおしゃべりと始めました。

しばらくするとその陶芸家は、 以前に一回だけフィンランド人に会ったことがある、と言います。
「もうそれからずいぶん経ちますなぁ・・・。」と言いながら、その客人が置いていったという本を探しに奥へ入っていきました。戻ってきた陶芸家の手にはカイ・フランクの名がサインされた本があったそうです。

日本でもブリニが作れます

とはいっても、フィンランド人と日本人の共通点を探すのがいつも簡単なわけではありません。私は先週100ものレシピをチェックし、昔からのお気に入り料理を思い出してみたり、日本人にお勧めできそうな、そして春らしいフィンランドの伝統料理はないかと一つ一つ考えてみました。

3月にはキリスト教のお祭りイースターがあります。これはフィンランドでは一年でももっとも大きなお祭りの一つですから、この時にはご馳走をたくさんつくりカロリー計算は忘れます。イースターのご馳走はたとえばパシャ。パシャ(Pasha)はラフカ(Rahka)というサワークリームから作りますが、これは日本では入手が困難です。そのほかのご馳走と言えばラム肉ですが、これも日本ではなかなか入手が難しい・・・。本当のところ私のイースターの最高のご馳走はマンミ(Mämmi)です。マンミとは濃い茶色をしたどろどろしたもので穀物を原料とするマンミの素で作りますが、これこそ世界中で、フィンランドでしか手に入らないという代物です。

頭が壊れるほど考えて出てきたのがブリニです。これをフィンランドでは2月~3月頃に食べるのです。この料理に必要な材料はそば粉。そば粉は日本でもお馴染みですよね!私はソバ茶もソバ・ヌードルもいただいたことがありますが、どちらもぜひおかわりしたいおいしさでした!

ブリニは小さくてかわいらしいパンケーキで、イクラやキャビア、グラーヴィロヒやきのこのサラダなどと一緒にいただきます。これは元々古い時代のロシアの高級料理でした。

ブリニのレシピを試してみるためにマイスオミチームを我が家に招待し、ミーティングをかねて味見をすることにしました。フィンランド-日本で一緒に食事を楽しむことへの敬意を表し、テーブルはティーマとキルタ、そして古い カルティオ・グラス でセッティングです。

このアイデアは想像以上に成功でした。フィンランド人も日本人もお皿にブリニを山盛りにし、キャビアやサーモンを口いっぱいに頬張り、幸せいっぱいのひとときでした。 フィンランド人と日本人にはたくさんの違いがありますが、でも心から一緒になって楽しめることもありますね。

Text & Recipe : Hanna Jamsa (ハンナ・ヤムサ)

ヘルシンキを拠点とした現地でのガイドツアーや様々なサービスを日本人旅行者に提供する会社、My Suomi(マイスオミ)代表取締役。実はフィンランド屈指のアンティークコレクターでもある。フィンランド・ヘルシンキ在住。

My Suomiはこちら↓

これが正しいブリニ、というものはありません。いろんなブリニがあってよいと思います。コックによっては小さな物を作る人もいますし、半径20センチもするような大きなものを作る人もいます。

同じく作り方や材料もいろいろなレシピがあります。ものによっては強力粉を使っていることもあります。大事なところは生地はイースト菌で必ず醗酵させるというところです。もう一つ大事なことは、ブリニをカリッと焼きあげるということ。コックはよく生地に炭酸水やビールを少しだけ加えます。そうするとブリニの表面にきれいにレース模様が出来るからです。