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2022年5月2日
バードが割れたらどーやって直す?

スコープで扱う数多くのガラス製品。なかでもバードやポムポムなどのガラス製アートピースはぜひとも飾って愛でたい。故に細心の注意を払っていても何かにぶつけて割れちゃったり、パーツがぽろっと取れちゃったり、突如「悲しみよこんにちは」してしまうなんてこと、あると思います。

不意にやってきた悲しみと仲良くなるため今回はスコープ修理部門担当おしぼりの体験を交えオイバのバードやポムポムなどガラス製品の破損、取れたパーツの修復に使える接着剤と直し方についてまとめてみました。

もくじ

・接着、その前に!
・おすすめ其1 エポキシ系接着剤 メリット、デメリット
・おすすめ其2 紫外線硬化型接着剤 メリット、デメリット
・まとめ

【 p.s.おしぼり 】その他の接着剤について

接着、その前に!

割れた時、悲しみのあまりペタペタと触りまくったと思いますので、まずはガラスに付いた汚れや指紋をクリーニングします。アルコールがあればソーナイス。断面は余計な油分や汚れがあると接着強度に影響しちゃうのでしっかり拭き取ります。作業中も素手で触ってしまったら接着前に拭き取りましょう。特にガラスの内側部分の汚れは接着後に拭くことができないので要チェック。どのような直し方をするにしてもガラスのクリーニングはやらないよりやったほうが間違いないです。

割れたガラスの断面は切れ味鋭い荒くれもの。ケガをしないよう十分注意しながら拭いてくだされ。

割れたパーツは元の向きが分からなくなりがち。特に破損したかけらが多い場合は難解なパズルになるので、この段階で元通りの位置や向き、割れたかけら同士を先に接着してから本体に接着するなど、貼りつけ手順のシミュレーションが大切です。きれいな仕上げを目指すなら、慌てて手を付けず、ここは石橋をたたきまくって慎重に進めましょう!

おすすめ其1
エポキシ系接着剤

エポキシとは樹脂が固まることでくっつく接着剤。聞きなれないエポキシという言葉、実はパッケージにでかでかと書かれているわけではありません。裏書の成分に「エポキシ」の文字、用途に「ガラス」の文字。使い方に「二液を混ぜる」云々と書いてあるものを選びましょう。エポキシにも種類があるのでガラスに対応したものを選べば透明タイプになるので間違いないです 。いっぱいあって分からなかったら店員さんに聞くのがベスト。ちなみに僕がよく使っているのはセメダインかコニシのエポキシです。

左がセメダインの5分型エポキシ。右がコニシの90分型エポキシ。パッケージにエポキシって書いてあればいいのにね。

エポキシ系の接着剤は5分とか30分とか90分とかパッケージに時間が書かれています。これは硬化が始まる時間の目安で、作業時間に応じて用意されたバリエーション。ポムポムなどのパーツが取れちゃったくらいの修理であれば5分タイプで十分。硬化時間が早いほど急いで作業する必要があります。破損が複雑で慌てず直したい場合はより硬化時間の長いタイプをチョイス。

二液を同量出して混ぜ混ぜ。よーくかき混ぜます。

エポキシ系の接着剤は基本的に主剤と硬化剤の二液を混ぜて使います。混合比は同体積で混ぜるタイプが一般的。エポキシは固まってからも肉痩せしにくい(体積が減りにくい)ので隙間ができにくく、強い接着が期待できます。なんなら多少の欠損箇所も埋まります。「混ぜるとかめんどくさいんですけどー。」って場合は、二液を混合しながら押し出して混合液が一つのノズルからでてくるロックタイトの「クイックミックス」というのもあります。 今回はこちらも試してみました。

なんか洒落た感じ。手が汚れなくていいですが硬化開始まで3分なので時間との勝負。使うとノズルが固まるのでチャンスは2回。

エポキシは正しい混合比にすることが強度に影響するのでクイックミックスの方が失敗が少ないかもですが、割高になるので僕は自分で混ぜる派です。

割れた断面にぬりぬり。内部も割れちゃって状態は良くないですがくっつけばそんなに目立たないはず。

折れやすい場所筆頭のくちばし。クイックミックスは二液がノズル先端から混合されて出てくる優れもの。透明で気泡も入りにくいのが利点。不透明だと関係ないけれども。

どちらも割れた断面に混合した接着剤を塗布して貼り合わせ。マスキングテープなどで直接止めて固定しましょう。場合によっては接着剤の上から貼っちゃっても大丈夫です。ただ、固定中に接着面がずれないようにだけご注意を。ずれていてもそのまま固まるくらい強力なので固まり出したら修正がききません。

マステがギプスみたいなもんです。クイックミックスが余っちゃうのでついでにポムポムのお玉さんも修理。

貼り合わせると十中八九接着剤がはみ出ます。気になるのでさっさと拭きとりたくなりますがここはじっとガマン。そのまま固まるのを待ちましょう。硬化前のエポキシは粘度が高すぎてうかつに拭き取ると地獄絵図と化します。 硬化して最終強度に達する時間はそれぞれのパッケージの裏書を参考に。丸一日置いとけばほぼOKです。

ガラスを接着した場合、はみ出た接着剤は硬化後カッターでコリコリすると簡単に削り取れるので表面へのはみ出しは気にしなくて大丈夫。ただ、手の届かない内側へのはみ出すと硬化後に削り取ることが不可能。この辺がテクを必要とするちょいムズポイントでして、接着材を割れた断面の表面側に塗り、なるべく内側にはみ出ないように工夫してみてください。

見栄えを気にしないのであれば少しはみ出たままのほうが強度が上がるので目立たなければ無理に削らなくてもOKです。 カッターで削ってもガラスに傷はつかないのでその辺はご安心を。

ほれほれ、ちゃんとくっついてます。実験的にやってますのでマネしちゃだめよ。

エポキシ系接着剤の硬化後はかなりの強度が期待できます。接着面積が少ない部分に折るような力を加えるとさすがに剥がれてしまいますが、無理に力をかけなければ大丈夫というのが僕の感想です。 実はこのバードの接着部の強度を調べたくて折るように力を入れてみたところ今度はくちばしの別の部分が折れました。マヂか・・・。でも身をもって接着力の高さを証明できたから良しとしましょう。

エポキシは長期間紫外線にあたり続けると劣化して黄色っぽくなるそうです。とは言っても基本室内に置くものだから個人的には特に問題ないと思ってます。術後の子に無茶させるのが心配な場合は常に日の当たるところを避けると良いでしょう。

メリット
・強力に接着
・近所のホームセンターで入手できて安価
・比較的小さな接着面でも接着できる
・不透明ガラスも接着可

デメリット
・混ぜる際空気が混ざり細かい気泡が入ると透明度が落ち
・隙間のないヒビ割れは修復できない
・長期間紫外線にさらされると黄色っぽくなるらしい

おすすめ其2
紫外線硬化型接着剤

UVライトをあてて硬化する接着剤。こちらも樹脂が固まることでくっつく接着剤です。使う際は接着剤に加えUVライトを用意する必要があります。接着剤は透明なものを選べば断面の仕上がりがとてもきれい。ただ、ガラス専用の接着剤とUVライトもホムセンでは手に入りにくいのでここはネットの力を借ります。

検索するといくつかヒットしますがガラス用で修復に適した粘度で透明度があり、できれば低価格のものというわがままな条件で探した結果、最終的に「ウルトラUVグルー」という接着剤にたどり着きました。この製品は限られたサイトでしか売っていないようです。

https://www.glass-craft.shop/product-list/28

探せば他もあるかもしれませんが自腹で買ったのでブランド決め打ち。

ガラス工芸の専門店さんのオリジナル。アクリル系で接着剤の透明度が高いのが魅力で接着面がとてもきれいに仕上がります。 ウルトラUVグルーは粘度が2種類。とろっとした中粘度のAタイプは流れ落ちにくいので作業性よく、さらっとした低粘度のBタイプはヒビ割れに浸透させたいときに有効です。

ウルトラUVグルーは300~380nmの波長の紫外線を当てると硬化するので、その範囲内の波長のUVライトを検索して365nmのものを Amazonで購入。値段はピンキリです。僕は2000円ぐらいのライトを選びました。試しにスタッフから借りたネイル用のUVライトを当ててみたところ波長が範囲外なのか、結果いくらやっても硬化せず。UVライトならなんでもいいわけではなさそう。対応する波長はかならずチェックしてから購入しましょう。

またUVで硬化させる性質上、紫外線が届く透明度の高いガラスしか接着できません。不透明のガラスは紫外線が奥まで届かないのでこちらはエポキシで修理しましょう。

底の抜け脱線オウル。

エポキシ同様、破損したガラスの断面に接着剤を塗布して貼り合わせます。接着剤の余分なはみだしを防ぐため塗りすぎないよう薄っすらとまんべんなく塗るようにしてください。UVライトをあてなければ硬化しないので作業は 落ち着いてできます。はみ出してしまった接着剤は固まればカッターで削り取れるので一旦はそのままでOKです。手の届かない内側にはみ出た場合は残念ながら諦めるしかないです。

まず分割した破片を接着。素手でやらないほうが安全です。

本体とくっつけてさらにUVライトを当てます。ズレなく止めるにはまだまだ修業が必要と悟る。あんまきれいじゃなくてごめん。

ずれないように貼り合わせてからUVライトを当てます。しばらくしてはみ出した接着剤の表面にシワが寄ったような感じになったら固まり始めた合図。手を放しても大丈夫な状態にますがしっかりとくっつけるためには数分~数十分間、接着剤を塗った部分にゆっくりとまんべんなく光を当て続けてください。もちろんマスキングで固定してもよいですが光が当てにくくなるので一部が固まったらマスキングをずらしてマスキングしていた箇所にもしっかりと光を当てる必要があります。硬化した表面は若干べたつきが残りますが、これは布で拭きとれます。

メーカーに確認したところ太陽光でも硬化するとのことでしたが硬化までかなり時間がかかるそうなので作業の際は太陽を当てにせず直射日光の当たらない場所でUVライトを使用するのが確実です。

左オウル:右目の真下に長く伸びたヒビを修復
右ポムポム:斜めに半周パックリ割れたものを修復 きれいに割れてる場合は仕上がりもきれいですがスジは残っちゃいます。

この接着剤は広い面が貼り合わさると強度が増す傾向にあります。パックリときれいに割れたガラス断面を接着すると剥がれそうな気配すらありません。逆に接着面が小さい場合はくっつきはするけど強度はそれほど期待できません。点より面の接着に適している印象です。

左上:中央の横に黒く見えてるのがヒビの断面
右上:低粘度Bの接着剤をヒビに沿って塗ります左下:ヒビに浸透します。低粘度なので垂れますが拭けばとれます右:黒っぽい部分が消えたらUV照射!

表面のヒビの筋は残りますが、角度によって黒く見えていたヒビの断面が接着剤を載せた所だけほぼ消えているのがわかると思います。

ヒビは低粘度タイプを使いヒビの筋をなぞるように塗ると浸透していきますので、筋にUVライトを当てて硬化させます。ヒビがくっついたかどうか見た目じゃよくわからないので軽く指で弾いて音で判断します。修正前は「コンコン」と鈍く低い音だったのが修正後は「キンキン」とまではいかないもののもう少し高い音に変わります。やってみると違いが分かりますので中島誠之助になりきって確かめてみてください。

表面に現れたヒビの筋は残るもののヒビの断面は見る角度によってわからなくなるくらいに修復できます。接着剤が浸透できないほどの小さなヒビは直せない場合もありますがヒビに関しては全く直せないと思っていたのでこれは今回試してみて一番の発見でした。

メリット
・割れた面同士を強力に接着
・透明度が高く断面の仕上がりがきれい
・低粘度の接着剤はヒビにも浸透し接着可能

デメリット
・近所で手に入りにくく高価
・エポキシほど強力ではない
・UVライトの購入が必要で出費増
・面積の小さい箇所の接着は苦手
・不透明のガラスは接着できない

まとめ

入手のしやすさと強度や汎用性を考えると確実にエポキシ系接着剤に軍配が上がります。紫外線硬化型はちょっとハードル高めですが、透明度が高く気泡も入りにくいので細かい作業が苦手じゃなかったらぜひ一度試して欲しい接着方法です。

割れたガラスの修復は元通りにするのは難しいですが直し方一つで、飾るのに問題ない程度から場所によってはよく見なければわからないくらいの修復は可能です。個人的な感想ですが、修復後はなんかふっ切れるとでも言いましょうか断然気軽に飾れるようになります。

「壊れたおかげで直し方を覚えられる!」そんなぺこぱ的発想で前向きになれる方。壊れたガラスたちにぜひ第二の人生を歩ませてあげてください。ちなみに今回の修復は食器や常に水に触れるものには向きませんので飾るもの限定でお試しを〜。

【 p.s.おしぼり 】
他の接着剤について

最近100円ショップでもよく見かけるクラフト用UVレジン。UVライトを使う点では紫外線硬化型と一緒ですが接着剤として販売されていないので候補から外しています。

ホームセンターの接着剤売り場を眺めると他にもガラスに使える接着剤があります。例えば一液型変性シリコーン接着剤。なかなか良さそうですがエポキシほどの強度がないとの情報を目にしたのでまだガラス接着には使ったことがありません。

同じく一液で使えるガラス用瞬間接着剤もあります。実は修復においては早くくっつきすぎるのも作業性が悪い。さらに裏書を見ると白化して困るものには使わないように書かれていたのでこれも外しました。でも一液で使えるという扱いやすさは魅力。これらはまたの機会にテストしたいと思います。

あと絶対に避けて欲しいダメ。ゼッタイ。筆頭なのが一般的な瞬間接着剤。バイクのタイヤが柱にくっついたり、ショベルカーが鉄棒しちゃったり、アロンアルファの強烈なコマーシャルが脳裏に焼き付いて、瞬間接着剤ならなんでもくっつくと錯覚している僕みたいな人。たくさんいると思います。

瞬間接着剤にはいろんな場面で大変お世話になったのですが 、CMの「なんでもくっつく神話」にとらわれ、数々の失敗も経験。その結果、いくら瞬間接着剤でも用途に表示されているものしかくっつかないと悟りました。

パッケージを捨てちゃった瞬間接着剤が冷蔵庫のポケットの隅っこに入ってたりすると用途も確認せず使っちゃって失敗するなんてことも多々あり。アロンあるあるです。

冷蔵庫の中で後生大事にとってある瞬間接着剤。一般的なタイプはどれもガラスには使えないです。

無敵と信じて疑わない瞬間接着剤ですが、数少ない苦手な素材の一つがガラス。 金属がくっつくならガラスもくっつきそうな気がしますが、ダメなんです。

例えばバードの折れた尾やポムポムのお玉さんをくっつけてみると一見くっついたかのように見えて、ちょっとした衝撃でポロっと剥がれ落ちます。瞬間接着剤信者はゼリー状とか特殊なタイプならいけるかもと思うのですが残念ながらそれも無理です。アロンアルファの場合はホームページにもガラスは苦手と書いてありました。接着した周りも白化してあちゃ~な二次被害も発生しちゃうので瞬間接着剤系はとりあえずでも使わない方向で!願います。(スコープおしぼり)