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2008年9月25日
魅惑のプッラ

PHOTO:原田 智香子

オーブンから立ち上るプッラの焼けるかおりに刺激され、焼き上がりを待って台所を出たり入ったり、と落ち着かない子供たちや夫の様子を見ることは母としてとても楽しいものです。

プッラとは、フィンランド語で甘いパンの総称。私はほぼ毎週プッラを焼きますが、その時にはいつでも同じように台所が混雑します。プッラがものすごく好きで、時には小ぶりのプッラを11個も食べてしまうような、たくさんのプッラを頬張る子供のことを「プッラねずみ」と呼びます。怖いことに、もしかすると我が家の子供たちには二人ともこのあだ名がつきそうです。

プッラは一人一人の子供時代の記憶に含まれるもので、それぞれの母親がそしておばあさんが、それぞれ世界で一番おいしいプッラを焼きます。プッラのかおりが家を“家庭”にし、安全な居心地を生み出します。フィンランドの最も有名な料理人でミシュランの星を持つハンス・ヴァリマキも、プッラ大好き人間として名乗りを上げています。

-オーブンから立ち上るプッラのかおりに勝るかおりを僕は知らない。そこにはノスタルジーとともに、気持ちを落ち着かせ、力を与える魔力がある。

とヴァリマキは雑誌のインタビューで答えています。 プッラのかおりは営業促進の手段としても利用されています。不動産屋は物件の売り手に、買い手の候補となる人が見学に来る直前にはプッラを焼くようにと勧めます。

次の世代へと受け継がれるプッラ

おばあちゃんと孫が一緒になってプッラを焼くこともよくあることです。おばあちゃんと一緒にプッラを焼けば、間違いなく正しいプッラの作り方を覚えることが出来ます。おばあちゃんも自分の子供時代にはやはり自分のおばあちゃんと一緒にプッラを焼いたのです

おばあちゃんはプッラを焼きながら孫が大好きな自分の子供時代の話を語って聞かせます。

私の母、インケリと娘のメリが一番好きな一緒の時間の過ごし方、プッラを焼くところを撮影しました。インケリおばあちゃんと孫のメリはすでに何十回も一緒にプッラを焼いています。初めてのときメリはまだ2歳でしたが今は8歳です。今ではメリもとても上手に手のひらで生地を小さく丸めることができるようになりました。

フィンランド人をフィンランド人にするいくつかの物事があります。サウナ、ミートボール、サマーハウス、サンタクロースなどがそうですが、プッラもその一つです。

それぞれのフィンランド人のプッラに対してと、そこに材料として何を入れるか、という意見はとってもはっきりしていて、それはその家族の中で脈々と受け継がれていきます。 ある人はプッラにはカルダモンがたくさん入っていなければならない、と言います。他の人は、レーズンの入っていないプッラなんてプッラではない、と言います。フィンランド人の会話の中で、「プッラからレーズンをつまみ取る」と言うと、それは誰かが何かにおいて自分に利益のあることだけを先を越して取ってしまうときに使います。

かもめ食堂で作ったシナモンロール

最近では頻繁にプッラの生地を使ってシナモンロールが作られます。映画の「かもめ食堂」の中で作ったシナモンロールはとってもポピュラーなパンです。

シナモンロールの味はもう既に独り歩きさえ始めています。去年の夏の新商品の中で一番のヒット商品はシナモンロール・アイスクリームでした!

最近はシナモンロールをものすごく大きく作ることがトレンドです。たくさんのフィンランドのパン屋さんやカフェが、半径が20cmもあるとにかくジャンボなシナモンロールを作ります。

もしシナモンロールをその日のメインディッシュにしたくない場合には、小さなかわいいシナモンロールもあります。(Pågenと言う名前のスウェーデン産のミニ・シナモンロールはほとんどのお店に置かれています。ビニール製の袋に小さなシナモンロールが12個入っています。どうやらスウェーデン人もシナモンロールのことがいくらかはわかるようです。もちろんフィンランド産の方がおいしいですが・・・。)

私自身もシナモンロールをたくさん焼きますが、でもこれはプッラの生地で作ることが出来るものの中の一つに過ぎません。プッラの生地と言うのは、たとえばインケリのような達人にかかれば、あっという間にテーブルがすばらしいパーティーのためのおもてなしで一杯になる、とても便利なものなんです。


伝統的なプッラの種類をご紹介します。

-ミニプッラ(Pikkupulla)

手のひらで丸める小さなプッラ。ザラメでトッピングします。

-バターの目プッラ(Voisilmäpulla)

ミニプッラの天辺にくぼみを作りそこにバターと砂糖をおとします。

-4つ編みプッラ(Pullapitko)

棒状にした生地を編むようにして細長いプッラにします。ザラメやアーモンドスライスなどでトッピングします。最も伝統的なプッラです。1cmほどの厚みにスライスしていただきます。

-サワークリームプッラ、バニラクリームプッラ、ベリージャムプッラ

それぞれ作り方は同じです。丸めて扁平につぶした生地の真ん中をすこしくぼませ、大さじ2、3杯のサワークリーム、バニラクリーム、ベリージャムなどを載せます。

-プッラリース(pullakranssi)とプッラケーキ
(ボストンケーキBoston-kakkuとも言います)

ちょっと不思議ですが、フィンランド人は何故かプッラにアメリカの町の名前を付けたがります。大手のパン製造会社のファッツェルもバニラ入りプッラを<ダラス>、シナモン入りを<テキサス>と言う名前で販売しています。 プッラリースとシナモンロールは同じテクニックで作られます。はじめに生地を平らに伸ばし大きなシートにします。(テーブルにはりつかないように生地の上にも下にもタップリと粉をひいてください。)

シート状の生地の上に溶かしバターを刷毛で塗り、シナモンと砂糖を混ぜたものを振りかけます。

シートを端からロールして棒状にし、端から輪切りにします。
ロールの棒を輪切りにし、個別に焼くとシナモンロールで、ロールの棒をそのままリング状のケーキ型に入れその表面にはさみで切れ込みを入れて飾りをつけて焼くとプッラリースとなります。


Text & Recipe : Hanna Jamsa (ハンナ・ヤムサ)

ヘルシンキを拠点とした現地でのガイドツアーや様々なサービスを日本人旅行者に提供する会社、My Suomi(マイスオミ)代表取締役。実はフィンランド屈指のアンティークコレクターでもある。フィンランド・ヘルシンキ在住。

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