HOME
食器
【販売終了】Moomin’s Day 2021

Arabia / Moomin’s Day 2021
Moomin’s Day special mug from Arabia

2018年8月9日、ムーミンの日に限られたショップのみで限定販売されたMoomin’s Dayは瞬く間に完売、幻のマグとして語り継がれています。それから3年、新たにMoomin’s Day special mugが発売されることとなりました(拍手！)　今回のマグの絵柄は、早春の風景。まだ氷の残る暗い川の岸辺にリュックを背負ったスナフキンが立っています。このあまり馴染みのない絵は、1993年発行のソングブック｢ムーミン谷の歌｣から採られました。反対側には、ムーミン谷の橋の欄干に座るムーミントロールとムーミンママ。こちらは小説『ムーミン谷の冬』から。2018年のマグをご存知の方は、同じ絵が使われている？とお思いかもしれません。よくよく見比べてみると、2018年のほうはママがわずかに息子に顔を向けていて、ふたりが座っている場所も島の岩の上にアレンジされていました。今回、ママは前方を向いていて、橋や川もほぼ挿絵のままです。表と裏、2点の絵をつなぐのは川と岸、淡いピンクに染まった夕暮れの空。スナフキンは去年の十月、冬になる前に、暖かい南へと旅立ちました。その冬、ムーミントロールはどういうわけかまだ冬のさなかだというのに冬眠から目覚めてしまい、スナフキンが置いていった手紙を何度も読み返して、彼に会いに南へ行こうと考えます(初めての雪に阻まれて断念するのですが)。スナフキンの手紙には｢やあ。よく眠って、元気をなくさないこと。あたたかい春になったら、その最初の日に、ぼくはまたやってくるよ｣(新版『ムーミン谷の冬』講談社刊／山室静訳／畑中麻紀翻訳編集より引用)と書いてありました。ところが、春を目前にして、ムーミントロールは氷の割れた海に落ちて風邪をひいてしまいます。それまでどんなに騒がしくても目を覚まさなかったムーミンママでしたが、ピンチを感知してぱっちりと目覚め、温かいジュースをこしらえて、息子を寝かしつけました。ひと眠りして元気になったムーミントロールは、冬の夜空を彩るオーロラのこと、ママのジャムを目当てにやってきた大勢のお客さんのこと、ご先祖さまのことなど、冬のさまざまな出来事を語ります。スナフキンは春の最初の日には間に合わなかったみたいですが、明日にはきっと帰ってくることでしょう。……と、なぜ真夏発売にこの話？と思わないでもないのですけれども、ムーミンの世界観がとてもよく現れていてムーミンの日マグにぴったり。強すぎないピンクとブルーが優しくもクールにも見え、どんな季節でも飽きることなく暮らしに寄り添ってくれそうです。

text：萩原まみ（ライター）

ムーミンの世界
その遠景のマグ

キャラものへの興味は薄いのですが、アラビアのムーミンマグだけは結構持っていまして、日々愛用もしています。なかでもキャラが目立っていなくて配色の渋いマグが好きです。2010年ムーミン65周年記念のNight Sailing、2018年Moomin’s Day、2016年スウェーデン限定で生産されたマグあたりが特に気に入ってます。そして2021年のMoomin’s Dayもいい、ほぼ風景なところがいい。スナフキンが見える面、ムーミントロールとムーミンママが座っている面、この2つに目がいくと思いますが、僕は中央にある誰もいない木の幹の面、誰もいない木の幹だけが見えているマグ、その見え方がいいなって思っています。ムーミンマグの定番ラインナップは品名がキャラクターだけにキャラが全面を覆っていて、マグを見て頭に浮かぶのはキャラクターです。夏や冬に登場するシーズナルマグを見ていればムーミン達の生活つまりは、その世界の日々が頭に浮かびます。そして僕が好きなマグ、ムーミンの日に発売されるマグはもっともっと引きの世界、ムーミンの世界にある夕焼けの空だとか、ムーミンの世界にある海だとか、ムーミンの世界にある自然が頭に浮かびます。定番、シーズナルマグ、ムーミンの日マグ、その図案はどんどん引いて、どんどん遠景となっていきます。ムーミンというより、ムーミンの生活というより、ムーミンのいる世界の自然を描いたようなマグというのは非常に少なく、発売は稀です。そして、それは大人が持っていても、老いぼれの僕が持っていても、誰が持っていても、おかしくない。だから僕でも欲しくなってしまうのです。それにそうそう販売されないのです、ムーミンの世界、その遠景のマグというのは。